2021-10-20
コミュニティ上で、Shinobu Wadaさんから頂いた服薬についての投稿を、以下にまとめていきます。
服薬について、実際の経験を聞いてみたいという方、ご参考になれば幸いです。
コンサータ服用の経緯
現在中1(12歳)の息子は、小1の1月から次のような感じでコンサータを服用しました。
- 小1の1月~小3の7月まで:登校日のみ服用し、土日は飲まない。途中18mgから27mgに増加したところ「イライラする」というので18mgに減量し、以降はずっと18mg。
- 小3の夏~小5:本人が服用したいときだけ、頓服。平常授業なんだけどなにか不安のあるときや、あるいは発表会・運動会・社会科見学など集団行動に不安のあるときに飲んでいました。小5からは、ほとんど登校しなくなったので、1学期に2回くらいしか飲んでいないかも。
- 小6~最近まで:学校にまったく行かなくなり、ほとんど服用せずなので処方無し。N中の入学テスト前後にそれまでの残りを少し飲みました。入学後、独りで電車通学する際に、ホームから落ちそうになったり、大きな交差点で赤信号なのに横断歩道に飛び出して轢かれそうになったりした自分が怖くなったと言って3回くらい服用しています。
- 現在:9月からの学校生活に向けて服用再開を本人が希望し、先日処方していただきました。
副作用としては、食欲減退と入眠リズムの保持困難が大きかったので、以下の工夫をしました。
- (7時起床)
- 朝食をドカッと食べる。
- 炭水化物、タンパク質、ビタミンミネラルに結構気を遣いました。でもあんまり細かいと続かないので、「白米かパンケーキ + スチーム野菜(またはグリル野菜) + 肉・魚・卵・納豆 + 具だくさん味噌汁」が朝の定番になりました。
- 生野菜をあまり好まないので、ブロッコリーや人参をフライパンで蒸して、そのフライパンで次に卵や肉を焼く…みたいに、お弁当を作るときのような手順と道具の手抜きをしました。高野豆腐が好きなので、週3回はほうれん草と高野豆腐のゴマ風味味噌汁でした(笑)
- 朝食後、8時までにコンサータ服用。
- 給食は「本人が食べられるだけでOK」で学校と調整しておきました。どのくらい食べたか(「ごはん一口とイワシ一口と牛乳一本だけ」とかざっくり)を連絡帳で教えていただきました。
- 帰宅後のおやつは、本人が好きな季節の果物とかゼリーとか、レンジで作る蒸しパンと牛乳とか。果物やゼリーだと、食欲が無くても食べてました。
- 18時頃の夕食は、食べられるだけ。小さなおにぎり + 野菜 + 肉・魚とか、パスタやサンドイッチを少しとか。分量的には、ファミレスの幼児用プレートの量くらいだったと思います。
- 20時過ぎになると「お腹が減った」と言い出すので、具沢山味噌汁とお餅と夕飯の残りのおかず。お餅は3つくらい平らげてました。お餅最強でした。
- 22時前にロゼレムとベルソムラを服用して、ベッドへ。
- あまりありませんでしたが、寝坊をして朝8時までにコンサータが飲めないときは飲まないようにしました。当初の1年は、「食事を採らせて8時までに服薬」というプレッシャーをわたしが勝手に感じて、時間管理にキイキイ言っちゃっていました。
- 2年生のあいだは、ビタブリッドの「レベルアップ」という栄養補助食品(ミロみたいな感じで、ドリンクタイプやスープタイプがあります)を朝食またはおやつ時間に加えたりもしました。でも、たんぱく臭(プロテイン的な香り)が苦手になって2年の3学期途中でやめました。
- 身体測定があるたびに保健室の先生のところに立ち寄って、標準成長曲線からの外れ具合が極端じゃないかなどの相談をしていました。学校栄養士の先生が、給食時間クラスを回って子どもたちの食べっぷりをチェックしている方だったので、お声をかけ、息子がどんなメニューだと食欲が無くても喜んで食べているかなどを教えていただき、そのレシピを教わって夕飯に出したりもしました(これは、結構息子が喜びました)。
そもそもの服薬のきっかけ
服用のきっかけは、1年生の11月頃 学校との面談で学校長から「ご自宅でも学校でも、環境調整を頑張ってきたし、本人もすごく頑張っているけれど、校内にいるあいだの息子さんの目が吊り上がってこわばっていて、かなりギリギリだと思うから、ここは一度医療的な介入をしてみてはどうだろうか?」という提案があったことでした。
普通の公立校なのですが、学校長リードのもと全校の先生方が息子の特徴や対応方法など知っていてくださり、家庭と学校のワンチームで支援体制を整えていた自負があったので「ああ、この校長先生がそう仰るなら、そうなんだろうな」と、提案自体への不快感などはまったくなかったです。
服用に対する不安・セカンドオピニオンでの薬の説明
ネットの情報などでリタリンやコンサータへの不安はありました。かかりつけの宮尾ドクターがあっさり「じゃあ、とりあえず飲んでみる?」みたいな感じで軽かったので余計に心配になって、療育センターの担当者に「迷ってるんだけどどうしよう」と相談したところ、別のクリニックのドクターをセカンドオピニオンという形で紹介いただき、そこへ息子を連れてお薬の種類や効果、副作用などについて教えていただくことにしました。
2015年末の情報なので、もう古いと思いますが、そこで言われたのは以下の内容です。
- ストラテラとコンサータがある。ADHD症状にのみ作用。アスペルガー症状には作用しない。
- コンサータの場合、良く効く(++)・効く(+)・効果なし(-)の割合が、ドクターの感覚だと【++ 4/10人・ + 5/10人 ・ – 1/10人】
- ストラテラは、コンサータよりも「効果なし」の子どもの割合が高い。
- なので、第1次選択としてはコンサータ。それで効かないとか副作用が強すぎる場合の選択としてストラテラ。それでもまったく効果が出ないお子さんも割といるので、「薬を飲めば、みんな楽になる」わけではない。
- コンサータで期待される効果は、
- 集中力の向上
- 衝動的言動や多動的言動の低下
- 攻撃性の低下(何かする前に、ワンクッションおける感じになる)
- 想定される副作用
- 食欲減退
- 入眠遅延
- 頭痛
- 吐き気、(食事を採れないことからの)低成長
- 想定服用期間:1年間。薬の効果で、生活がうまく回るようになると本人の認知が変わったり、周りとの関係性が良くなって自信がついたりして、環境調整支援だけでなんとかなるようになる。そこで停止。必要性が出たら再開。
- 効果測定:ドクターの経験では、副作用が全く出ないお子さんは、効いていないことがほとんど。
実際、息子は服用後1年半で「もうなくても大丈夫」と言い出し、3年生の1学期で定期服用を離脱しました。そして、中1の今、自分から「飲みたい」と言い出した感じです。
セカンドオピニオンのドクターも当時、息子の様子を見て「これは1度試してみる価値があるかもしれないですね」と仰り、次のような説明をしてくださいました。
- ADHDやASDで苦しいのは、二次障害。ADHDやASDの子をそのまま受けれ居てくれる環境だったら、本人も周りも何も困らないから、障害だと見なされないし薬なんかいらない。けれど、息子さんがいる環境はそうじゃない。
- 障害とみなされる環境下でも、あっけらかんと自分のままでいられる子なら薬なんかいらない。けれど、周りに合わせること(みんなと同じことができる)を本人が望み、その望みが達せないことで苦しみ、自信を失い、怒りと無力さを感じ、世の中や自分を捉える認知フィルターがどんどん歪んでいく。これが二次障害。息子さんは、今その状態。
- 認知の歪みは、できるだけ早いうちにとってあげた方がいい。歪んだフィルターのまま成長すると人格形成に影響する。歪みを軽減するのに薬の助けを借り、歪みが軽くなったら(困難さが減ったら)環境調整だけに戻す。歪みが強すぎると、どんなに環境調整しても本人の認知が受け入れなくなってしまう。
- 年齢が上がれば上がるほど歪みをとるのが難しくなる。コンサータでも、10人にひとり、100人に10人は、まったく効果が出ない感じがあるので、効くか効かないかを判定する意味でも今試す価値はあると思う。
- コンサータもストラテラも効かない場合、今の生活とは別の環境支援(環境変化)なども視野に入れて、息子さんの成長をどう支えていくか考えていく必要が出るだろう。
そのドクターは、ご自身がASD+ADHD+トゥレット症候群の方でご自身もずいぶんご苦労され、息子と同年齢のお孫さんもASD+ADHDとのことでした。
最後に、息子のいないところでわたしから「これをお医者様に質問してはいけないことはわかっていますので、ドクターではなく個人としての先生にお伺いします。仮定の質問なので意味が無いかもしれませんが、先生が小学生の頃にコンサータやストラテラがあったら飲んでみたいと思われましたか?」と聞いたところ、間髪入れずに「はい。あったらどれだけ良かったか。飲みたいと思ったと思います」と回答されたのが、とても印象的でした。
服薬の決断と効果
帰宅後、息子には「今、あなたが感じている「〇〇ができない」とか「●●がすごく不安」とかいった困りごとが減るかもしれないお薬があるけれど、効くか効かないかはわからない。もしかしたら、合わなくてちょっとお腹痛いとか出るかもしれない。どうする?」と聞いたところ、迷いなく「飲んでみたい」という返事だったので、服薬を決めました。
この際、食欲減退などの具体的な副作用は本人には意図的に告げませんでした。思い込みが強い特性があるので、具体的に副作用を告げるとプラセボ的な副作用が出てしまうかなあと考えたからです。
セカンドオピニオンのドクターもかかりつけドクターも「コンサータは、学校に行かない日は飲まないで構わない」とのことだったので、1年生3学期の始業式から、通学日のみ服用を開始しました。
息子には怖いほど効果が出て、初日から5時間教室に居られ、授業中も着座、鉛筆筆記もこなすという結果で、途中学校から経過報告の電話をもらったのを覚えています。学校の先生方もわたしも、あまりの効き目にショックを受けて「薬で人間が変わってしまうのではないか。本当に継続して良いのだろうか」と心配したほどでした。
ただ、その後の様子を見ていると、本人の人格が変わるとかそういうことはなく、相変わらず不器用さや敏感さはありましたし、むしろ「なんかみんなが普通にできていることを、ぼくもちょっとだけ頑張ればできるようになった!」という本人の喜びの方が大きかったので、心配しながらも継続してみました。総じて、服用期間のQOLはとても高かったと思いますし、今になって本人も「飲んでるときは、よくわかんないけどなんかぜんぶうまくいった気がする」と言っています。
服薬停止→頓服化
3年生の1学期後半に、息子から「もうお薬なくても大丈夫だと思う」という発言がありました。わたしが食事や睡眠時間にキリキリしていたのを、なんとなく感じていたのもあるのかもしれませんが、実際、学校では「スーパー玄都くん」と呼ばれるくらいうまく行っており、あそび友達もできて、本人的に「もう大丈夫」になったのだと思います。
これを機会に、ドクターに声をかけて頓服化しました。発表会の合同練習とか、社会科見学などの校外活動とか「ちょっとちゃんとしたい」と本人が望むときにだけ服薬する感じです。これが学校に行っていた小5途中まで続きました。
服薬停止後は明らかに食欲が増進しました。本人の成長タイミングとの兼ね合いがあるので、確実な因果関係とは言えませんが、体重や身長の伸び具合も良くなった気がします(気のせいかも)。体重が増えるなか18mgのままの頓服だったので、この時期の効果については、本当に薬が効いていたのか、はたまた過去の経験からのプラセボ効果だったのか不明です。でも、本人にとっては「コンサータ飲んでるし、大丈夫」というお守りになっていたようです。
これから
本人の希望で9月から通学時の服用(週3回)を再開します。
第二次成長期でもあるので、食事や睡眠についてはやはり心配ですが、
①とりあえず食べられるときに好物をガンガン出す
②糖尿病の5分食、6分食みたいな感じで、小分けで1日の総カロリーをとりあえず採らせる
③栄養素は1週間単位で考える。何か欠けてる日があっても、気にしない
で乗り切ろうかと思っています。
服薬中の様子など(補足)
【宿題・筆記】
服薬中は、漢字の書き取りや計算ドリルなど、本人がものすごく苦手とする宿題が、今考えると信じられないほどできていました。
また、作文や自由研究なども苦労はしていましたが、相当量の文字を書いていましたし、理科の観察レポートなどもきちんとこなせ、教室の後ろにクラスメイト達と同じように貼られていました。
3年1学期で服用を停止したあと、3年生の後半からだんだん筆記の困難が戻り、作文や調べ学習には音声入力(4年生からはPCキーボード)を使うようになりました。4年からは、テスト・漢字・計算ドリルの宿題以外は、ほぼ手書きをしなくなりました(学校でもノートは一切取らず、観察レポートなども未提出)。
5年以降はほとんど文字を書かなくなり、6年秋のN中入学テスト前には自分の名前の「都」がきちんと書けないことが判明して、「漢字で名前を書く練習」をしたくらいです(テストが終わった今、また「都」の字は書けなくなっているかも)。
入学テスト前のテスト準備(2日間くらいやるのを数回)のときには、本人が希望したので、残っていたコンサータを何回か服薬しました。学校に行かなくなった5年・6年の総合問題集のなかから、親が問題を選び、それに口頭で答えるのがメインでした。この段になっても「本番でひらがなで〇になるものだったら、今は書かない」と(笑)
入学テストには筆記作文があるのですが、この練習(1回)だけは、夫が適当にお題をだしたもので規定枚数を書いていました。それもほとんどひらがなでしたが、本人に確認したところ本番も「名前以外は全部ひらがなで書いた」と申しておりました。
(テスト当日もコンサータを服用しましたが、私自身は前述のとおりプラセボ?みたいな気持ちでおります)
宿題は、1年生のときからあらかじめ学校と相談して、本人に苦手に合わせた調整をしていました。
- 漢字:もともとは「①漢字ドリル本体の書き込み ②漢字ノートに同じ漢字の読み・用例・漢字そのものの書き取り練習を10文字」のような宿題なのですが、学校と調整して「①漢字ドリル本体の書き込み ②漢字ノートに練習3文字と音訓での短い例文を3つだけ」などにカスタマイズしてもらい、練習文字の部分は、わたしが青鉛筆で薄く下書きをしてなぞれば良いようにするなど
- 計算ドリル:ノートへの問題転記などはすべてわたしが事前に済ませて置き、本人は計算して回答を書くだけ。文章題の「式」「答え」などは、「Q」や「A」の一文字にして、途中計算式も書きたくないときは書かない。
また、図形などではコンパスや三角定規の使い方などに不器用さが出て、きれいに描けなかったのですが、「意図がわかる(正解だとわかる)ように描けていれば〇」という対応を学校側がしてくださいました。ただ、このあたりでクラスメイト達から「どうして自分たちはきれいに線が重なっていなかったり、きれいな直角になっていないと✕なのに、玄都だけ○なのか?」という声があがり、本人的にはすごく気にしていました(4年生時)。
このあたり、薬を継続服用していればうまくできたりしたのかもしれませんが、本人が望まなかったため、薬は頓服のままにしました。
ここはちょっと微妙な親の気持ちもありまして…
本人の希望で、3年冬から4年の夏に中学受験塾に通ったのですが、「こんなに書く宿題を、残り2年近くやるのは無理」ということで辞めました。仲良しの仲間たちが継続したこともあり、そこから抜けるということは本人にとって若干のしんどさがあったかと思います。もし、この時期にコンサータを服用していたら、受験の結果はどうあれ「やりたいと思った何かを続けられた」という経験ができたんじゃないか…という思いもあります。
また、4年生のときに学年全体が不安定になり、そこで「なんか教室の雰囲気が悪いから居たくない」→「1日のほとんどをパソコン室か図書室で過ごす」という学校生活になりました。学年の雰囲気は5年生で見違えるように改善したので、本人も「学校の先生もクラスも楽しい!」となったものの「教室でみんなと一緒に1日を過ごす」というサイクルには戻りたいけど戻れない…となってしまい、1学期途中には「学校行っても、朝から終わりまでパソコン室にいるのも図書室に居るのも飽きたし、教室には居たいけどどうしても居られないし、学校に行っている意味が無いと思う」と言い出して、ホームスクーリングに切り替えました。このときも「ああ、お薬を飲んだら変わるのかなあ」という一抹の思いがわたしのなかにありましたが、本人が「要らない、飲まない」というので、定期服薬はしませんでした。
【 身長・体重】
服薬までの身長は標準曲線を超えており・体重は標準かそれより少し下、という感じでした(早生まれにしては、背は高めで少し痩せているという感じ)。
毎年、春から夏の終わりにかけてぐっと大きくなっていたのですが、服薬中の2年生の春夏は思ったより身長が伸びなかったので、母子手帳持参で保健室の先生に相談したところ、
- 年齢(7歳)が第一次成長期と第二次成長期のはざまで、成長ペースが緩やかになる時期であること
- 身長が伸びていないのだったら心配だけれど、今までより緩やかだけどちゃんと伸びている。むしろ、体重が標準を下回るポイント幅が大きくなっているけど、そちらも心配するほどではないと思う。夏休みの断薬期間できちんと三食摂取できていたなら、様子を見ていきましょう
というようなコメントをいただきました。
実際、薬を頓服にした3年生の春夏は身長体重ともに結構伸びましたが、ほぼ服用をしていなかった4年生の春夏は「そこそこ」、5年生の春夏は「結構な伸び」という感じでバラつきがありました(わたしの気持ち的には「お薬飲まなくなって急に成長したわー」という感覚があるのですが、数字を見ると因果関係は疑わしいです)。
なので、副作用での食欲減退は「体重には関係ある」ものの、身長の伸びに直接影響するほどだったのかは不明でした。
今回12歳で服薬してみてどうなるのか、家に身長計がないので、柱を使って記録してみようかと思います。
運営スタッフより
今回のまとめは以上です。
服薬については、これが正解というものはなく、個々に合わせて常に慎重に判断されていくことだと思います。
だからこそ、服薬してもしなくても「これでいいのか」という悩みはつきもの。
体験をシェアして「こんな視点や工夫の仕方もあるんだ」という気づきやヒントを得られることで、よりよく過ごしていけるのではと感じます^^